日本人とワインの始まり
銀座3丁目のワインバー「HIBINO1882」は、イタリアワインの輸入元、日比野ワインアンドスピリッツが経営する店である。店名の1882とは何かと尋ねたら、驚いたことに、同社がワイン輸入を始めた年というのだ。1882年といえば明治15年、帝国議会や憲法のできる前のことである。ワインはごく一部でしか飲まれていなかったはずだ。
そこで明治時代のワイン輸入の歴史を調べてみようと思ったのだが、資料がなかなかないのだ。分かったことのひとつは、神谷伝兵衛が1880年に浅草に開いた一杯飲み屋、のちの「神谷バー」は、開店当初は輸入葡萄酒を発売していたという話だ。ところが客の口に合わず、砂糖や蜂蜜の甘味を加えたところ、大いに評判になったという。
以降、ワインを甘くして飲むという日本なりのワインの伝統ができ、1907年(明治40年)鳥居商店発売の「赤玉ポートワイン」のヒットにつながって、同商店はサントリーへと発展していく。
日本人がワイン本来の姿を楽しむようになったのは、ここ20年くらいのことになる。そして日比野ワインアンドスピリッツ社は2002年、創立120周年記念行事として、HIBINO1882を開店したのだ。自分の部屋にいるような雰囲気でリラックスでき、ワインについての店員さんの説明も丁寧な店である。03-3538-6828
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