ニュー新橋ビル入門
2016年も4月を迎え、JR新橋駅日比谷口のSL広場も、新入社員や転勤族を囲んだ賑やかなご一行の姿をよく目にするようになった。その広場の南側にそびえるのが、新橋を象徴する「ニュー新橋ビル」である。「ニュー」といっても竣工は45年前の1971年(昭和46)。11階建てで、地下1階から地上4階までは店舗、5階から上はオフィスと住宅になっているとか。下層階に格子模様を施した外観のデザインがユニークである(写真上左)。
このビル、戦後の闇市を前身とした商店街が都市計画事業で整理されてできた経緯があり、店舗フロアには歴史の古い店が数多く残っている。昔ながらのゲームセンターや赤ちょうちん、喫茶店などの佇まいは秀逸である(写真上中・右)。特に、地下1階の飲食店街はまさに高度成長期の飲み屋横丁を再現したテーマパークのようで、台形をしたフロアに迷路のように“路地”が走り、歩き回っていると、遠い過去の見知らぬ街にタイムスリップした錯覚を覚える。一方、2階では、往く先々で店頭に立つ女性から、たどたどしい日本語で「マッサージいかがですか」と声をかけられるなど怪しい雰囲気が一段と強まり、ここは本当に日本なのかと疑わしくなるほどだが、こうした店が増えたのは近年の傾向らしい。3・4階に上がると、だいぶ人通りも少なく、そのさびれ感がまた心を打つ。4階から屋上テラスに出られるはずだったが、現在は閉鎖中との張り紙があった。
おそらく初めての方にはとっつきにくいビルだが、少なくとも1階だけは見慣れた飲食店チェーンも増えて現代の空気と調和され、だいぶ入りやすくなった。特に駅前通り沿いは、唐揚げ、とんかつ、餃子、牛めしに豚丼、立ち食いのそば・うどん・寿司などの店が、それぞれ魅力あるリーズナブルなメニューを掲げ、ランチの店選びに迷うテナント構成となっている(写真下)。個人的には牛肉をトロトロに煮込んだ肉皿定食の煮玉子付き640円(写真下右)が好物である。
長年サラリーマンに親しまれたこのビルにも再開発計画が持ち上がっており、2020年東京オリンピックが終わった後には建て替え工事が本格化すると言われている。新橋らしいディープな雰囲気を味わいたい人は、ぜひお早めに探訪を。
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