全国農業高校収穫祭に思う
2016年11月12・13日の週末、東京駅にある大丸東京店12階と、八重洲地下街で、今回で8回目となる「全国農業高校収穫祭」が開催された。全国から40校を超える参加があり、自分たちが育て、製造した農産物や加工食品を、それぞれの地域PRも織り込みながら販売、農産物を使用し企業と共同開発した化粧品などを出品する高校もあった。皆の一生懸命さには心打たれるが、さすがにネギやジャガイモを持ち帰るのはしんどかったので、カバンに入りそうな小ぶりのものだけを、試食を楽しみながら買いまわってみた。こうして公に販売するには、食品衛生法や食品表示法なども勉強する必要があろう。かつては農業高校というと本当に地味な存在だったが、学校を飛び出し、こんな都会の真ん中で、活きた経済社会とつながる活動ができるようになったなんて、実に素晴らしいことだ。意欲のある生徒には、やりがいも大きいに違いない。会場では、特に女子生徒がイキイキとして見えた。
そこで思い起こされたのが「ノケジョ」という言葉である。ひところ、大学の理系の学部で学ぶ女子学生「リケジョ」が話題になったが、今は理系の中でも農学系で学ぶ「ノケジョ」が注目されている。文部科学省の調査でも、この四半世紀で農学系学部で学ぶ女子学生の比率は20%から倍増の40%を超え、45%に迫る勢い。中には女子の在籍者数が男子を上回るところもあるという。
農学系といっても、必ずしも農業の知識や技術ばかりでなく、女性がもともと関心の高い食文化、食の安全、食と健康、環境問題など暮らしに密着した身近な問題を学ぶことが多く、卒業後の活躍の場が、さまざまな業界や自治体等に広がっていることも人気の理由だろう。入学希望者の増加により、農学系の受験倍率は医学・薬学系に次ぎ、理工系や社会科学系を上回るという報告もある。それだけ優秀な学生が集まるということで、求人も増えているらしい。
その一方、農業従事者は減少を続けており、女性の農業への関心を就農につなげようと、農林水産省は2013年に「農業女子プロジェクト」を立ち上げ、就農女性の活躍を紹介したり、ネットワークを作ったり、企業と連携して就農女性向けの商品開発を進めるなどの支援活動に取り組んでいる。「ノケジョ」には、静かにではあるが、多方面から大きな期待が寄せられているようである。
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