『麒麟の翼』の
日本橋と水天宮
2012年1月28日公開の映画『麒麟の翼』は、同題名の東野圭吾「加賀恭一郎シリーズ」第9作の映画化作品だ。第8作『新参者』のTVドラマ化作品の人気を受け、同じキャストで映画化された。ドラマ『新参者』は人形町をたっぷりと描いたのが人気の要因のひとつだったが、本作でも人形町と、そこから歩いて15分ほどの日本橋エリアが魅力的に描き出される。
題名になっているのが日本橋の麒麟像(写真上)、その前で男(中井貴一)が倒れるのが話の始まりだ。彼は江戸橋地下で刺され、そこから1ブロック歩いてきたことが判明する。なぜ瀕死の身体で麒麟像まで行かなければならなかったのか。会社や自宅から離れた日本橋で何をしていたのか。阿部寛扮する加賀刑事が捜査を開始する。
日本橋中央にある麒麟像は、1911年に橋が石造りに架け替えられるときに、両端の獅子像と合わせて青銅で製作された。中国の伝説の動物である麒麟に翼をつけたのは、日本の道路の起点である日本橋から飛び立つイメージとのこと。現在の日本橋は上空に高速道路があるため麒麟は飛び立てない、ということが本作のポイントのひとつになっている。
さらに、捜査の過程で浮かび上がってくるのが日本橋七福神、とくに人形町の水天宮(写真中)である。水天宮は安産祈願の神社として信仰を集めていて、子宝いぬ(写真下左)が有名だが、本来は水と子を守る神を祀る神社であり、水難避けの信仰もある。縁起物売場では河童の面などを売っている(同右下)。『麒麟の翼』では水天宮のそうした2つの側面が両方生かされている。
日本橋や人形町の見所がたっぷりと登場する映画を見たあと、舞台となった町の散策や日本橋七福神(なぜか8つある)の探訪を楽しまれてはいかがだろう。
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