天王洲の新スポット
東京モノレールで浜松町駅から1つめ、天王洲アイル駅は、運河に囲まれた「島」にある。アイル(isle)とは文字通り「島」という意味で、islandをちょっと詩的に表現した言葉らしい。ただ、天然の島があったわけではなく、幕末、幕府が黒船対策として急きょ建設した台場(砲台を設けた人工島)の1つ、第4台場がここに設けられたことに始まる。海上には7つの台場の工事が進められたが、結局この第4台場は未完成のまま開国を迎えた。現在の東京モノレールの東側、シーフォートスクエアと呼ばれるエリアは台場の基礎の上に造成されたもので、ボードウォーク(遊歩道)の下の石垣のちょっと崩れた部分に、その名残が残っているという(写真上中)。
やがて天王洲は昭和初期に埋め立てが行われ、品川と陸続きになって、工場・倉庫街として栄えた後、1990年代に再開発の動きが活発化した。その象徴的な出来事が、1992年の東京モノレール天王洲アイル駅とシーフォートスクエアの開業だった。その後、2001年のりんかい線の乗り入れなども弾みにオフィス街として発展する一方、古い倉庫をリノベーションをしたレストランやイベントスペースなどができ、現在はウォーターフロントの雰囲気漂うオシャレなスポットにも変身をとげている(写真上右)。そんな新しい街づくりに貢献してきた寺田倉庫という会社が、今年2016年、またユニークな試みをした。本業を活かし、建築模型を「展示しながら保存する」という新しい発想のもと、6月18日に「建築倉庫」というミュージアムをオープンしたのである。
場所は寺田倉庫本社の1階。中に入ると、まさしく倉庫のラックの中に100ほどの作品が展示されている(写真下)。建築に詳しいわけではないが、災害支援活動で知られる坂茂さんや、新国立競技場の設計で話題になった隈研吾さんの名前くらいは知っており、興味を引く。素人としては、どうしてもプラモデルのジオラマのような感覚で見てしまい、特に模型の中にいる人物の暮らしのひとこまに思いをはせてしまうが、そんな見方もまた楽しいのではないだろうか。今後、企画展示なども工夫しながら、ぜひ天王洲の新しい寄り道スポットとして発展してもらいたいものである。
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