海上から見た「東京港」
東京都が所有する「新東京丸」に乗って、海上から東京港を見学する会に参加した。お断りしておくが、レジャーではない。あくまでも「見学」である。
この新東京丸は、普段は小学生の社会科見学会や、任意の団体からの見学会を受け付けており、点検整備の一定期間を除き、平日は毎日のように運行されている。それ以外に(社)東京都港湾振興協会により月に何回か個人向け見学会が企画されていて、今回はそれに申し込んだ次第。
この新東京丸は「視察船」という位置づけで1983年に建造された。今のところ見学会以外、何かに継続して利用されている様子はない。無駄ではないか、という方もおられようが、大震災などの非常時は輸送手段として使える。東京のような自治体が船舶を所有し、日頃から運行ノウハウを蓄えておくのはそれなりに意味があると思われる。
さて、見学会は竹芝埠頭の小型船ターミナルを出発(写真上)、芝浦埠頭、品川埠頭、大井コンテナ埠頭の巨大クレーン群を右手に見ながら(写真2番目)東京の最後のごみ処分場といわれる新海面処分場をぐるりと回り、建設中の仮称・東京港臨海大橋(写真3番目)をくぐって青海客船ターミナルに着く70分余りの航海。そこから徒歩でテレコムセンター隣の「東京みなと館」というミュージアムに行き、レクチャーのあと館内を見学。20階の窓から眺める港の風景もなかなかのものだ(写真下)。
普段は東京が貿易港であることなど意識しないが、東京都港湾局がまとめた「東京港港勢」という資料によると、年間貿易額は10兆円(2009年速報値)を超えて我が国最大であり、以下名古屋港、横浜港、神戸港の順となっている。だが、東京港が国際貿易港として開港したのは1941年と遅い。これは、徳川幕府が江戸城の近くまで外国船が進入してくることを恐れて横浜を開港したことと、そもそも東京湾が遠浅の海で、大型の船を着岸させるには大規模な工事を必要としたことが主な原因のようである。1859年に開港した横浜港は2009年に開港150周年を迎えたが、東京港は来年、2011年が開港70周年である。改めて「物流拠点・東京港」の姿を再認識した見学会であった。
※2010年11月15日、東京港臨海大橋の名称が「東京ゲートブリッジ」に決定しました。
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