昔も今も最前線
「2016年、東京オリンピックスタジアム予定地」と記された看板、広大な更地の向こうには、「中央清掃工場」が巨大な姿を横たえている。ここはオリンピック開催地決定が間近に迫った2009年9月の晴海である。
私にとって晴海といえば「展示場」だ。いろいろな見本市などに、よく訪れたものである。空調など効かず、特に夏の暑さは大変だった。それにも増して、交通渋滞がひどかった。バスが全く動かず、晴海通りを銀座まで歩いたこともしばしばであった。
「晴海見本市会場」(東京国際見本市会場)ができたのは、昭和34年(1959)のこと。以来、高度成長の一翼を担い、常に時代の最前線の姿を見せてくれた施設の1つであったが、次第に時代遅れとなり、平成元年(1988)に幕張メッセが、さらに平成8年(1996)に東京ビッグサイトが開業して、使命を終えた。その跡地に、平成13年(2001)に竣工したのが中央清掃工場だ。敷地と屋上緑地の一部は散策路として開放されており、なかなかの眺望を楽しむことができる。その一画に、かつての見本市会場のにぎわいを伝える記念碑が残されている(写真上左)。
中央清掃工場を通り過ぎると、中央区立「ほっとプラザはるみ」が隣接している(写真下左)。水着で利用する温浴施設やスポーツジムなどを備えた健康施設である。光熱や空調は中央清掃工場が生み出す蒸気や電気を利用しており、環境にやさしいのが特徴。3階の屋外ジャグジーにつかりながら、レインボーブリッジの夜景を眺めるのもよさそうだ。2階にはレストランがあり、洋食から和食までいろいろなメニューを提供している。店の造作がシンプルなうえ、セルフサービスも併用して低コストで運営しているためか、懐にはやさしい。550円のふわふわオムライスと、ランチタイムサービスの100円ドリンクをいただいて一休み。開放感のある窓から明るい日差しに輝く海を眺めると、ちょっぴりリゾート気分である。
いま晴海周辺には高層マンションが次々にできていて、日曜日のこの日、車の通行は極めて少なく、のんびり散歩したり自転車を楽しむ住人の姿が目立った。帰り道、晴海通りを銀座へ向かうと歩道におびただしい数の駐輪がみられたが、臨海部のマンションに住んで自転車で銀座へお買物、というのが新しい住人の日常なのだろうか。時は移り変わっても、晴海にはやはり「新しい時代」の空気がある。
CONTENTS