東京湾に「森」が育つ
2012年9月29日、第29回全国都市緑化フェアが、上野恩賜公園、井の頭恩賜公園、日比谷公園、浜離宮恩賜庭園などをメイン会場として開幕した。東京で開かれるのは1984年の第2回以来、28年ぶりという。会社から近い日比谷公園会場(写真上左)をのぞいてみたが、盛り上がりは今ひとつ。毎年この時期には日比谷公園ガーデニングショーが開催されていて、第10回目の今年は緑化フェアとの同時開催となった。そのためか、やや焦点がぼけて、見所のはっきりしない催しになってしまったという印象である。
その中で注目したのは、東京湾の中央防波堤内側に位置する「海の森」だ。昭和48年(1973)から62年(1987)にかけ東京都のごみ処分場として使われていた埋立地だが、ここを海上公園にし、30年かけて緑の森を育てようという壮大なプロジェクトが2007年から進められている。子供や孫の世代に緑豊かな環境を残すとともに、この森で海からの風を冷やし、都心に送り込む風の道をつくることでヒートアイランド現象の緩和につなげることも期待されている。まさに東京で行う都市緑化フェアの象徴ではないか、と思うのだ。
さてこの海の森、今年の2月に開通した東京ゲートブリッジから全容を眺められるようになったが(写真上右)工事中のため中に入ることはできない。年2回ほど特別公開はあったものの、交通機関が不便なのが難点だった。それが今回、9月29・30日、10月26・27・28日の5日間は緑化フェアの会場の1つとして公開され、当日は新木場駅から無料のシャトルバスが出る。これはチャンスと、早速出かけてきた。プロジェクトはまだまだ道半ばだが、2008年から始まった植樹によって緑の土地が少しずつ広がっており、未来に希望を感じさせる。高台にのぼると、南は羽田空港、東は東京ゲートブリッジ、西から北にかけては都心のビル街の彼方に東京タワーや東京スカイツリー(5月開業)を望むすばらしい風景が広がる。吹き抜ける風も心地よい。いま日本全体としてはいろいろ厳しいこともあるけれど、東京駅も大正3年(1914)の開業当時の姿を取り戻したし(10月1日オープン)、東京はなかなか頑張っているじゃないか、と少し嬉しい気持ちになるのであった。
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