南桜公園に桜咲く
2010年4月、西新橋2丁目の南桜公園のリニューアル工事がほぼ終了し、新しい姿でお目見えした。よく晴れた昼時に立ち寄ってみると、咲きほこる桜の下、近隣の会社員が大勢集まって弁当を広げ、お花見の青いシートの陣取り合戦も展開されていた。まさにビルの谷間のオアシスといった印象だ。
そうした人たちの多くは気にとめることもないだろうが、長年近所に住み、ここにあった小学校のことを知る人にとっては、想いは複雑かもしれない。あの桜も小学校の校庭にあり、長い間子供たちの成長を見守ってきたものだそうだ。園内には校名を刻んだ記念碑や二宮尊徳像も残されている。
その小学校は、南桜小学校(当時は南桜学校)として1877年に開校した。関東大震災で大きな被害を受けたが、1928年、防災を考慮し公園と一体となった設置計画で復興された。公園はこの時にできたものだ。その後、1964年、東京オリンピックの年に1907年開校の西桜小学校を統合して桜小学校となり、さらに1991年、児童数の急速な減少により、桜田小学校、鞆絵小学校とともに新設の御成門小学校に統合された。閉校後も小学校の建物は港区住宅公社(2009年3月解散)や福祉会館などに使われてきたが、ついに完全に取り壊され、敷地全体が公園に生まれ変わったのである。
では、その他の小学校はどうなったか。芝公園3丁目の御成門小学校(写真A)は、1994年に桜川小学校、1995年に神明小学校をさらに統合し、結構人気の高い小学校になっているという。虎ノ門1丁目の西桜小学校があった辺りは環状2号線の再開発計画区域に組み込まれて2007年に高層マンションが完成、3階までが「虎ノ門健康福祉館・虎ノ門高齢者在宅サービスセンター」(とらトピア)として活用されている(写真B)。新橋6丁目の桜川小学校跡地には、2006年に特別養護老人ホームをはじめとする複合型福祉施設「福祉プラザさくら川」が建設された(写真C)。また浜松町1丁目の神明小学校跡地には2008年に区民向け高層住宅ができ、3階までが港区立エコプラザになっている(写真D)。桜田小学校、鞆絵小学校は、別の記事で紹介したとおりである。人々の記憶を置いてけぼりにして、街はどんどん変わっていく。
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