築地から豊洲へ
最近、ふと気になったのが築地市場の豊洲移転の話。反対の声も大きかったように記憶しているが、2016年5月現在、あまり話題になることもなく、やや世の中の関心が薄くなっていないだろうか。だが現地では工事が着実に進んでおり(写真上)、最寄の東京臨海新交通臨海線(通称ゆりかもめ)「市場前駅」近くの建物には「11月7日開場」の横幕が掲げられている(写真下左)。そう、豊洲市場のオープンまで、あと半年に迫っているのである。
築地市場は、もともと関東大震災で壊滅した日本橋の魚市場が移転してきたもの。今回は、そうしたやむにやまれぬ事情はなく、主として流通経済的な観点から、施設の老朽化・狭隘化を理由とした移転のようである。ただ、築地市場は昭和10年(1935)の開場から80年を経過した、いわば「老舗」。水産物や農産物の流通機能面だけではなく、世界に通じる日本の「食」を代表するブランドになっていただけに、「豊洲」でどうなの、という思いは多くの人にあるだろう。
しかも、築地はちょっと頑張ればJR新橋駅から歩いて行ける。そこから2キロ以上も離れた豊洲となると、公共交通機関を利用して行くのはやはり不便だ。実際、ゆりかもめで新橋駅から新市場前駅まではかなり遠回りの印象である。このゆりかもめ、何とかもう少し便利にならないかと思うのだが、現在は東京メトロ有楽町線との乗換ができる豊洲駅が終着駅。軌道だけは駅を通り越し、ちょっと芸術的なオブジェのように銀座方向に伸びていて(写真下右)ひょっとして東京駅につながるのでは、などという期待を抱かせるものの、その計画は全くなし。唯一、晴海を通って勝どきまで延伸する計画は以前からあるらしいが、一番の建設チャンスである東京オリンピックを控えてもその動きは皆無だ。どうやら、宙に浮いた軌道のオブジェは、このまま豊洲の名所旧跡にでもなってしまいそうである。
新しく生まれる豊洲新市場、果たして、このアクセスの不便さを補って余りある魅力のある施設になるのだろうか。築地に匹敵する新たなブランドに育っていくのだろうか。
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