よみがえる東京駅
2011年2月某日、久しぶりにJR東京駅の丸の内口に降りたら、大規模改築工事で工事用フェンスやシートが迷路のように張り巡らされ、えらいことになっていた。まったく歩きにくいったらありゃしない! そんな不満をくすぶらせながらロータリーに出て、ふと駅舎を見上げると、グレーの工事用シートの上から異国のモスクのようなドーム型の屋根が「チョットだけョ」と顔をのぞかせていた(写真2番目)。一瞬、天から神々しい光が降り注いだかのようであった。おお、これはまぎれもない、東京駅開業当時のドーム屋根ではないか。もう出来ていたのか!
東京駅が皇居前の何もなかったところに建設され、それまでの新橋駅に代わって東海道本線のターミナル駅として開業したのは大正3年(1914)のこと。当時の駅舎は3階建で南北の乗降口にドーム型の屋根が乗っていた。しかし昭和20年(1945)の東京大空襲で3階部分を完全に焼失、戦後の復旧工事では2階建に改装されドームも簡易な八角屋根となり、以後60年以上そのまま使われてきたのであった。
日本の近代化の歴史を伝える赤れんがの大規模建築物で今も東京に残っているものといえば、すぐ頭に浮かぶのは桜田門近くの法務省旧本館、北の丸公園の国立近代美術館工芸館、そしてJR東京駅であろう。今回の工事で、工事用フェンスに描かれているような竣工当時の東京駅の姿がよみがえる(写真3番目)。真向かいには、昨年2010年の春に整備を終えたばかりの幅員70メートルの行幸通りが、皇居前広場に向けてドーンと突き抜けている(写真下)。丸の内中央口を降り立つと、すぐ正面に皇居の森を見わたすことができるのだ。何とすばらしい光景だろう。すっかり歴史の香りを消してしまった京都駅などと比べれば、東京駅はエライ! 東京駅の保存と復元に努力してきた方々に感謝。2012年春と言われる完成の日が待ち遠しい。
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