大官庁街建設の夢
地下鉄有楽町線桜田門駅のすぐそばに、国の重要文化財、法務省旧本館(通称赤れんが棟)がある。東京の赤れんがの建物といえば東京駅が代表的だが、こちらもその約半分、間口130メートルほどの巨大な洋風建築で、まるでヨーロッパの宮殿のようなたたずまいに圧倒される。
この日は、満開の桜が歴史を刻んだ赤れんがの外壁に映え、エキゾチックな日本の春を演出してくれていた。
この建物は明治政府が招いたドイツ人建築家ヘルマン・エンデとヴィルヘルム・ベックマンの設計によるもので、明治28年(1985)に司法省庁舎として建てられた。明治政府は欧米列強にも引けを取らない首都建設のため、この一帯に中央官庁を集中する壮大な都市計画を立てたが、財政難もあり、中心人物であった外務大臣井上馨の失脚もあって頓挫してしまった。わずかに実現されたものの1つが、この建物であった。第二次大戦の東京大空襲でれんが壁を残して焼失したが、2度の改修を経て創建時の姿に復元され、往時の壮大な夢の存在を今に伝えている。
なお、この法務省旧本館は、3階の法務資料展示室(写真左)など一部が平日のみ一般公開されていて見学することができる。ベランダからの眺めはなかなか気分が良い。余談だが、このあたりは幕末まで米沢藩上杉家の江戸屋敷があったところで、それを物語る碑が植栽の中に設置されている。米沢藩といえば上杉景勝が初代藩主であり、2009年のNHK大河ドラマ「天地人」の主人公、直江兼続の活躍を思い浮かべる方も多いのではないだろうか。
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