縁結びの神社、活況
飯田橋にある東京大神宮は、「縁結びの神社」として若い女性に大人気だそうだ。さまざまなタウン誌・情報誌にも頻繁に登場しており、クチコミでますます評判が広がっている。
2011年7月初めの暑い日、初めて来てみたが、やはり若い女性が続々と参拝に訪れていた。さほど広くはないがきれいなお宮で、暑さをやわらげるドライミスト、麦茶のサービスなども気が利いている。「恋―」「縁―」「幸せ―」などのキーワードがついた、可愛らしいお札やお守りの豊富な品ぞろえ(?)も見事である。七夕祭りが近いとあって、願い事を記したおびただしい数の短冊が笹竹に結ばれているのも絵になっていた。
それにしても東京大神宮とは新しげな名称である。歴史をたどると、現在の日比谷シャンテの近く、かつて三信ビルがあった辺りに明治13年(1889)に建立され、伊勢神宮をお参りしたのと同様のご利益がある「東京のお伊勢様」日比谷大神宮と呼ばれて、人々の信仰を集めていたそうだ。それが、やがて「縁結びの神社」の原点ともいえるプロジェクトを手がけることになる。明治33年(1909)、皇太子(後の大正天皇)の結婚式が初めて皇居内の神前で行われたのを機に神前結婚式の様式を確立し、普及の先頭に立ってきたのである。結婚式は家庭で行うのが当たり前だった時代、極めて画期的なことだった。帝国ホテルにも近く、大神宮で式をあげてホテルで披露宴という新しいスタイルは、きっと多くの女性たちの憧れの対象となったことだろう。しかし、日比谷大神宮は間もなく関東大震災で社殿を焼失、首都復興にあたり、昭和3年(1928)に現在地に遷座して飯田橋大神宮となり、今日の東京大神宮の名称となったのは戦後になってからのことだ。最近の「縁結びの神様」の評判は、おそらくはその歴史を振り返り、顧客(参拝者)を分析し、的確なマーケティング活動を展開した成果ではないかと推察し、敬意を表するものである。
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