カナダ大使館の感動
地下鉄銀座線青山1丁目駅4番出口からすぐのところに、カナダ大使館の大きな庁舎がある。普通、特別に用もない一般人が大使館に出入りするのは難しいものだが、カナダ大使館は一部施設を公開していて、そこには自由に入ることができる。
大使館入口は4階にあり、外付けのエスカレーターで上ると広い屋上テラスに出る。そこはカナダガーデンと名づけられ、カナダの大地をイメージする空間が続き、太平洋を経て日本の「石庭」に至る意味深げなストーリーが展開されている(写真上4点)。その節目ごとに、不思議なオブジェが目を引く。カナダ先住民イヌイットが標識や宗教的用途に使い、2010年バンクーバーオリンピックのシンボルマークにもなった「イヌクシュック」の像が立つあたりは、北側に赤坂御用地、東側に高橋是清翁記念公園の豊かな緑が美しく、眺望も大きく開けて、実に心地よい空間になっている。
ガーデンを横切り、正面入口を入ってエレベーターで地下2階まで下りると、カナダと日本に関わりのある資料を集めたモダンな図書館と、「高円宮記念ギャラリー」という美術館がある。美術館の名は、故高円宮殿下とカナダとの深い関わりを象徴している。高円宮殿下はカナダのクイーンズ大への留学経験があり、妃殿下の久子さまとの出会いもカナダ大使館のレセプションの席であったという。2002年、カナダ大使らとスカッシュの練習中に突然倒れ、47歳の若さで急逝されるという出来事も衝撃的であった。
たまたま訪ねた日は「高円宮妃殿下絵画展」が開催中だった(4月29日~6月23日、平日のみ)。高円宮殿下が愛用されたカメラなどの遺品や、ご家族で集めていたぬいぐるみ、3人のお嬢様方の思い出などを描いた作品を中心に展示され、どの作品にも、ご家族に対する久子さまの深い愛情が感じられて心を打たれた。また思い出の品々が、絵に描かれたと同様のシチュエーションで展示されているのも印象的だった(写真下2点)。
全く思いもかけず、すてきなアートに出会えた1日であった。
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