芝離宮に梅の便り
羽田空港に向かうモノレールに乗る。浜松町駅を出発してすぐ、左手の眼下に、こんもりと木々の茂った一帯が目に入る。なんだろう、と思って後日訪ねてみた。そこは「旧芝離宮恩賜庭園」。ほのかな梅の香りが迎えてくれた。
この庭園は江戸時代、肥前唐津藩主であり、徳川4代家綱、5代綱吉に老中として仕えた大久保忠朝が延宝6年(1678年)に屋敷を構えたところで、現存する最も古い大名庭園の1つ。「芝離宮」は、明治以降、宮内省の所有となってからの名称で、大正13年に東京市に下賜されて、今日に至っている。
この界隈で庭園といえばJR新橋駅から徒歩7、8分、もとは将軍家の屋敷であり、8代吉宗が象を飼っていたという話も伝わる「浜離宮恩賜庭園」が有名で、芝離宮はやや知名度が低い。
面積も約6分の1と小規模である。しかし私の感覚では、浜離宮は広すぎて全体像が見えにくい。池(泉水)を中心に山や谷をめぐらし、その中を回遊して風景の変化を楽しむ「回遊式泉水庭園」の魅力を気軽に味わうには、JR浜松町駅のすぐ近くでもあり、芝離宮のほうがおすすめと思う。
なお、2つの庭園は徒歩20分ほどの距離にあり、歩行距離が相当のものになることを覚悟すれば、両方を1日で歩くことも可能である。
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