封印された怪物たち
当社からほど近い、千代田区内幸町にある日比谷ダイビル。近代的なビルには不似合いな、不気味な顔のオブジェがいくつも組み込まれている。
ダイビルは大阪に本社のあるデベロッパーである。昔は大阪ビルヂングといい、略して大ビルをダイビルと呼んだのが今の社名になっている。大阪・中之島にあるダイビルは、大正15年(1926)に渡辺節氏の設計で建てられた大正期を代表する大規模オフィスビルで、重要文化財級の建物であるといわれているが、まもなく再開発のため取り壊しの運命にあるということだ。
日比谷ダイビルも、もともとは渡辺氏の手によるビルが建っていたが、平成3年に今の形に建て替えられた。これらのオブジェは、以前のビルに飾られていたものを再利用したもので、かつてここに荘厳なビルが存在した事実を静かに語り継いでいる。
まあ、そのあたりの事情はどうあれ、私にとっては、ここは都会の中のささやかなファンタジーの世界である。さまざまな怪物たちが神々との戦いに敗れて封じ込められており、世が乱れ、封印の力が弱まったとき、彼らは再び目覚め、解放されて、また神々との新たな戦いが始まるのだ。
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