白金のキャンパスに
建つ洋館
港区白金台にある明治学院のキャンパスには、歴史を感じる洋館が建ち並ぶ一画がある。全く味気のない団地のような学舎で学んだ者には、うらやましい限りである。
この学校の歴史は、開国間もない時期にアメリカからやってきたヘボンという医師であり宣教師であった人物が、1863年、横浜に「ヘボン塾」を開いたことに始まる。その名前にピンとくる方も多いだろう。そう、彼は日本で初めての和英辞書の編纂者でもあり、その中で用いた日本語表記法が、後にヘボン式ローマ字と呼ばれるようになったのである。
やがてヘボン塾は築地の外国人居留地へ移転、その後いくつかの神学校などと合併して明治学院となり、明治20年(1887)、白金の地に開校した。そのころ建設された洋館の一部が修復保存されているのだ。まず正門を入って左手に見えるのがに大正5年(1916)竣工、昭和6年(1931)にほぼ現在の形となった礼拝堂(写真上左)。そして右手にあるのが明治23年(1890)の竣工当時は教室や図書館として使われた建物で、今は明治学院記念館となり、一部を歴史資料館として一般にも公開している(写真上右)。もとは全館赤レンガ造りだったが、地震で壊れたため2階部分を木造にして再建し、現在のようなしゃれたデザインになった。
この記念館の奥にある洋風木造建築が最も古く、明治22年(1889)の創建とされる。開校当時の宣教師(教師)住宅の1つで、住人の名前をとってインブリー館と呼ばれ、国の重要文化財に指定されている貴重な建物だ(写真下)。今は教員用の会議室などに使われていて、現代風のテーブルや椅子が置かれ、住まいとしての印象が薄れているのが残念だが、階段室や部屋の造り、窓まわりのデザインなどに、明治の時代に生きた外国人宣教師の暮らしぶりが目に浮かぶようだ。
これらの建物、普段は学校関係者以外の入館は制限されているが、毎年11月上旬ころに開催される「東京文化財ウイーク」には特別公開され、気軽に見学ができる。その時期というのが、ちょうど明治学院大学の大学祭と重なり、今年2011年は11月1日から3日までであった。文化財鑑賞と大学祭を一緒に楽しめるというのも、なかなか面白いではないか。
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