赤プリ旧館の
貴重な1日
「赤プリ」の名で親しまれたグランドプリンスホテル赤坂は2011年3月末日をもって閉館した。4月から6月までは、東日本大震災の被災者の避難施設としても活用されたが、7月以降は工事用フェンスが施され、いよいよ再開発計画が動き始めたようである。ほとんどの建物は解体されるが、唯一残されるものに「旧館」がある。
施設を管理する(株)西武プロパティーズの資料によると、この旧館は明治43年(1910)の韓国併合により日本の皇族の1つとなった李氏朝鮮の王家の居宅として昭和5年(1930)に建てられた。李王朝最後の皇帝、純宗の皇太子李垠(いうん)殿下と、その妻で日本の皇室出身の梨本宮方子(まさこ)妃が住んでいたが、戦後、西武鉄道が取得し、昭和30年(1955)に赤坂プリンスホテルとして開業したものである。その後、別館、新館が建設されて客室に使われることはなくなっても、引き続き結婚式場やレストランとして営業していたので、思い出のある方も多いことだろう。
ホテルの閉館を機に、その旧館が2011年6月、「旧李王家東京邸」として東京都の有形文化財に指定された。一部改装されてはいるが往時の姿をよくとどめており、歴史的に貴重な建物であることが改めて評価されたのである。そこで本格的な工事が始まる前に一般公開の動きがあり、2011年8月24日、1日だけの見学会が開催された。日韓の歴史の狭間に生きた皇族の暮らしに思いをはせながら、特徴的な4階建ての塔、見る方角によりさまざまに表情を変える白壁の外観、格調高い意匠をこらした部屋の数々をカメラに収める。やはり質の高いものは時代を超えて美しい。再び見に来られるのはいつだろう。建物は再開発計画の都合で建築位置を動かすことになっており、一帯の工事がすべて完了し、再び公開できるまでには数年を要するそうである。
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