もみじ谷、色づく
ついこの間まで暑い暑いといっていたのに、あっという間に秋を飛ばして真冬の寒さになり、もうクリスマスかという時期になってしまった。ああ、この師走のあわただしさ。2012年はゆっくり紅葉も観ずに終わりかと思っていたら、「もみじ谷の紅葉が見ごろ」との情報あり。
訪れてみると、たくさんの欅の落葉が敷き詰められた絨毯ができ、少しずつ色調の異なるもみじがあでやかに色づいていた。耳を澄ませると、滝の流れる音や渓流のせせらぎが聞こえ、しばし心も洗われる思いであった。
こんなひと時が、都心のそれも背後に東京タワーがそびえる芝公園の一画で楽しめる。芝公園は明治6年(1873)、増上寺の広大な敷地に開園した日本で最初の公園の1つ。1号地から25号地までに区分けされて整備が進められてきたが、もみじ谷はその19号地(東京タワーは20号地)に当たり、昭和59年(1984)に整備を終えた。土地の高低差を利用し、深山幽谷をイメージして作庭されており、険しい石段を上った先に小さなお堂が佇んでいる風景もなかなかの趣きだ。だが、如意輪観世音菩薩を奉るこのお堂を過ぎると、東京タワーの入口がすぐそこに見え、都会の日常に一気に引き戻される。このギャップもまた心地よし。東京タワーでは今年もクリスマスマーケットが始まり、日が暮れるとイルミネーションが輝いてすっかりクリスマスムードだが、もみじ谷はもうしばらくの間、日本の秋の風情を楽しませてくれそうである。
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