バラ香る屋上庭園
JR御茶ノ水駅、または水道橋駅から徒歩10分ほどのところに、あまり目立たないが、東京都の水道関連施設がある。東京都水道局本郷給水所と、それに隣接する「東京都水道歴史館」である。
東京の近代水道の歴史は明治31年(1898)、今では超高層ビル街に変わってしまっている西新宿に淀橋浄水場が稼働し、同時期に建設された本郷給水所と芝給水所を経て東京市内への配水が行われたことに始まる。
浄水場が河川の水を取り入れ浄化して給水所に送り、そこから事業所や家庭に配水される水道の仕組みは今も基本的には変わらない。給水所は単なる中継施設ではなく、災害等で施設が破損してもしばらくは水の供給ができるよう、強固なコンクリートの池に一定の水量を常にプールしながら配水する重要な役割を担っている。2017年現在、東京には120カ所余りの給水所があるそうで、その中でも本郷給水所は最も歴史ある給水所の1つというわけだ。そんな場所に、江戸から東京に至る水道の歩みが学べる「水道歴史館」が設けられているのもおのずと納得がいく。
本郷給水所の施設自体の見学はできないが、屋上が「本郷給水所公苑」という文京区の公園になっていて、ビルの谷間の小高い緑の丘という都心ならではの景観が楽しめる。和風庭園、洋風庭園、児童遊園で構成されており、和風庭園には池が配され、洋風庭園は春と秋のバラの咲く季節がとりわけ美しい。その地面の下にはコンクリートの配水池があり、休みなく水道の水が流れていることを想像しながら散策するのもまた楽し、ではないだろうか。
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