市民生活を支える水道
時間があれば、少し遠回りでも、メイン通りを離れて裏道を歩いてみるのもよいものだ。
東京タワーを間近にみるこの公園、港区芝公園の裏通りともいえる場所にある。小高い丘のようにもみえるが、実は鉄筋コンクリートの構造物の上だ。構造物とは半地下構造になった「配水池」のこと。残念ながら外からは見えないが、新しい水道水が常に循環しながら蓄えられ大規模震災時の備えとなっているそうだ。東京にはこうした緊急用の配水施設が200カ所ほどあり、103万立方メートルにも及ぶ飲料水が確保されている。その中でも、ここは8万立方メートルという大きな貯水能力を持つ、平成14年(2002)に大規模リニューアルされた東京都水道局芝給水所の施設である。
水道水は、浄水場から給水所を経て各事業所や家庭に配水される。東京都には12の浄水場と120余りの給水所があり、芝給水所もその1つではあるが、大変歴史的な1つということができる。
というのも、明治31年(1898)、淀橋浄水場(当時の東京府豊多摩郡淀橋町、現在の新宿区西新宿・北新宿)と本郷給水所、芝給水所の稼働をもって、東京の近代水道の歴史が始まったからである。現在見られる芝給水所の古い門(写真下)は、昭和40年(1965)に廃止された淀橋浄水場の門が移設され、平成14年のリニューアル工事の際に復元されたもの。また、旧芝給水所の煉瓦造りの建物の一部も配水池のコンクリートの壁に残され(写真中)歴史を伝えている。
当初1日当たり24万立方メートルだった東京の水道の施設能力は、いま686万立方メートルになっているという(給水実績は440万立方メートル)。日頃から目立たないところで大事な仕事を続けている方々に、心からの敬意を示したいと思う。
※数字は平成18年度現在
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