赤レンガの館のある
キャンパス
小中学校から高校くらいまでは入学式の「桜」のイメージが似合うが、大学となると、なぜか銀杏やポプラなどの紅葉がアカデミックな雰囲気にマッチする気がする。特に歴史ある校舎が残るキャンパスなら、なおさらである。
わが港区でそんなキャンパスの1つといえば、明治4年(1871)開設の慶應義塾大学三田キャンパスを思いつく。ということで、2014年11月某日、ふらりと足を運んでみた。正門は南門だが、目を引くデザインの東館が建つ東門から入るほうが趣がある(写真上右)。昔は東門が正門で、当時の「幻の門」が坂を上りきったところに移設され(写真上左)、まるでずっとそこにあったかのように周囲の風景に溶けこんでいる。キャンパスは道路と標高差がある小高い丘の上に広がっていて、高いビルなどなかった時代は「下界」を見下ろす誇り高き学びの園といった印象だったに違いない。
そうした時代の印象を強く残しているのが、明治45年(1912)に竣工した堂々たる赤レンガの洋風建築、現在は国の重要文化財に指定されている慶応義塾図書館旧館(写真下左)である。2000年に竣工した東館もそのデザインを踏襲し、一体感のある空間を創り出している。同じ赤レンガの建築でも、東京駅や旧近衛師団司令部庁舎とは異なり、慶応義塾図書館旧館は3つの三角屋根と八角の塔で構成される左右非対称の外観が新鮮だ。正面入口を入ると、ロビーは重厚なつくりで、階段まわりのデザインや照明器具にも歴史が感じられる(写真右中)。さらに2階に上る階段の踊り場には、大正4年(1915)に完成するも戦災で焼失、昭和49年(1974)に復元された大きなステンドグラスが色鮮やかに輝いているのが印象的だ。
残念ながらこの日はまだ銀杏の色づきが一つであったが、勤労感謝の日をはさんで開催される大学祭が終わるころには、歴史建築と紅葉が調和した美しい秋の景観を見せてくれそうである。
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