桜を愛でつつ墓マイラー
2010年も4月を迎え、いよいよ都内でも桜が満開になったと思ったら、3日・4日の週末はもう散り始めた。天気は不安定だし、ぐずぐずしていると見損なってしまうぞと思い、500本余りの桜がある港区内でも指折りの桜の名所、青山霊園を訪ねた。桜のトンネルは見事であった。宴会気分を封印し、心静かに眺める桜も良いものである。
青山霊園は、1万4千の墓所に12万人が眠る23区内最大の霊園である。明治7年(1874)、どこの寺院にも属さないわが国最初の公共墓地として政府により作られ、しばらく「青山墓地」と言ったが、昭和10年(1935)に他の東京市営墓地とともに公園墓地を目指した計画が進められ「霊園」となった。その後霊園を廃して公園にするという動きもあったそうだが、現在は霊園と公園が共存する空間としての整備が進められている。我が国の近代化の歴史に登場する数々の著名人が眠っていることでも有名である。
となると、近頃はやりの「墓マイラー」が頭に浮かぶ。著名人の墓を訪ね歩き、その人物が活躍した時代と生きざまに想いをはせることに魅力を感じる人が増えているそうだ。
良い機会なので、にわか墓マイラーとなり、いくつかを訪ねてみることにした。まず霊園管理事務所で著名人の墓の案内パンフレットを入手。東京都建設局が作成したもので、「歩いてみませんか歴史の森~青山霊園 時の流れが積み重なる空間~」と語りかける。お役所にしては良い表題だと思う。ただ表題とは裏腹に、掲載されている地図が分かりにくい。墓所に案内看板が立っているわけでもなく、目的地に行き着くには少々苦労がいる。大久保利通の墓(写真下左)はひときわ立派なのですぐにわかり、「坂の上の雲」に登場する秋山好古の墓も比較的見つけやすかったが、尾崎紅葉は時間がかかった。このちょっとした苦労が、また楽しみなのであろうと納得する。
いかにも「墓マイラー」という方には出会わなかったが、歴史ウオーキングといった感じの年配者を結構見かけた。カメラを下げパンフレットを持ち歩く私を見て「同士」と思ったのか、「ハチ公の墓はどこでしょうか」と尋ねられた。正確には御主人の上野英三郎東京帝国大学教授の墓で、傍らに小さなハチ公の墓がある。たまたま拝んできたばかりで、得意げに教えて差し上げることができた。よい気分であった。そして本日のお気に入りショットは、墓石と桜と六本木ヒルズの森タワー(写真下右)。その巨大なお姿は、思わず手を合わせたくなるような神々しさであった。
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