赤坂の宮殿を身近に感じる日
緑豊かな赤坂御用地の北側に位置する迎賓館は、国賓・公賓の宿泊や接遇に使われる国の施設で、わが国唯一の西洋風宮殿建築であるという。もともとは明治33年(1900)の大正天皇(当時皇太子)御成婚を祝し、東宮御所つまり皇太子の住まいとして計画され、10年の年月をかけて明治42年(1909)に完成した。ところが、日露戦争を経て世界の強国に仲間入りしたという国民的な意識の高まりを背景に、国をあげて建設した建物はあまりに贅沢すぎた。そのため赤坂離宮として迎賓などに用いられてはきたが、東宮御所としてはほとんど使われなかったそうだ。戦後は、皇室から国へ移管され、さまざまな公的機関が置かれてきたが、やがて国の本格的な迎賓施設の必要性が高まり、5年余りに及ぶ大改修が行われて、昭和49年(1974)に今日の「迎賓館」が誕生した。それから30年余を経た2006年から2009年にかけて再び大改修を実施、同年、国宝に指定され、創建当時の壮大で華麗な姿を維持しながら、今も外交活動の舞台として活躍を続けている。
その見事な建物は、普段なら正門のフェンスの合間からのぞき見ることしかできないが、すでに昭和50年(1975)から一般の人が見学できる「参観日」を設けている。国賓を迎える施設の一般公開は、世界でもあまり例がないという。応募して抽選に当たることが条件だが、最近の実績では年に一度、10日間ほどの日程で、毎年2万人ほどを受け入れている。当日はこれが日本の建物かと驚かされる壮大な外観、大噴水のある美しい中庭をはじめ、レセプションなどが行われる豪華な部屋の数々をじっくり見て回ることができ、その強烈な存在感に圧倒される。例年は夏場の開催で、空調はあっても広くてほとんど利かず暑くて大変らしいが、今年2011年は東日本大震災の影響で日程がずれ、秋になったおかげで快適な一般参観となった。そんな年にたまたま私も抽選に当たり、まことにラッキーであった。内部は撮影禁止だが外観は撮影できるので、よい記念になる。なお、建物の正面外観だけを間近に見るなら、抽選なしで誰でも前庭に入れる「前庭公開日」という機会を利用するのも良いだろう。
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