旧新橋停車場にエール
JR新橋駅から200~300メートル。新しい高層ビルが建ち並ぶ汐留地区の一角に、ちょっと周囲と雰囲気の異なる低層の建物が建っている。あまりオーラがないので、何となく通り過ぎてしまうかもしれないが、2003年4月10日に完成した旧新橋停車場だ。
新橋と言えば、鉄道発祥の地だ。明治5年10月14日(1872)に、日本で初めて、新橋-横浜(桜木町)間の29キロを約53分で結ぶ鉄道が開通した。開業当時の新橋の駅舎は、大正12年(1923)の関東大震災で焼失したが、その姿を、まさしくそれが存在した場所に再現したのがこの建物である。
さて、新橋駅は開業以来ターミナル駅として活躍したが、大正3年(1914)に東京駅ができたあとは貨物専用駅になり、汐留駅と改称した。
同時に、烏森駅が新橋駅の名称を引き継いだ。その後汐留駅は昭和61年(1986)で廃止され、国鉄民営化を経て跡地は売却され、大規模再開発が行われたわけである。その過程で、長く地中に埋まっていた駅舎やプラットホーム等の発掘調査が行われた。現在の建物は、それらを埋め戻した上に建設されており、遺構の一部を窓越しにのぞき見ることができるような構造になっている。
この建物は、あくまでも新築で再現したものであるから中身は全くの別物で、鉄道歴史展示室のほか、多くをスペースをレストランが使っている。そうしたことがまた、存在感の薄さにもつながっているのだが、鉄道発祥の地・新橋を象徴するスポットとして、もう少し注目されても良いのではないかという気がする。
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