白金の東京大学
地下鉄南北線・都営三田線白金台駅2番出口のすぐそばに、東京大学のキャンパスがある。本郷、駒場はよく知られているが、この白金キャンパスはというと、首をかしげる方が多いかもしれない。
ここには東京大学医科学研究所と付属病院があり、300人ほどの大学院生が学んでいる。明治25年(1892)「日本の細菌学の父」として知られる北里柴三郎を所長に迎え、福沢諭吉らが設立した大日本私立衛生会附属伝染病研究所がルーツ。明治32年に国立伝染病研究所、大正5年(1916)に東京帝国大学附属伝染病研究所となって日本の伝染病研究の最前線を担い、その後研究対象を各種難病へと広げ、昭和42年(1967)に東京大学医科学研究所に改組されて今日に至る。
この辺りは、国立科学博物館附属自然教育園や八芳園など、都心の中でも貴重な緑がまとまって残る地域。白金キャンパスも、樹齢100年ほどの大木が茂る緑地を持っている。目黒通りに面した正門をくぐり、その森を右手に見ながら進むと、風格のある建物が目の前に現れる。関東大震災からの復興が進む中、昭和12年(1937)に竣工した当時の本館、現在の1号館で、著名な安田講堂を始めとする本郷キャンパスの主要な建物と同様、東京大学の第14代総長も務めた内田祥三の設計。このような歴史を刻んだ個性的な建物が、今も現役で活躍しているのが嬉しい(写真中段)。
一方で気になるのは、この1号館と同時期、やはり内田博士の設計で隣地に建設された旧国立公衆衛生院の建物(写真下段左)。実によく似ている。平成14年に組織の移転後、立入禁止となり、フェンスに囲まれたままだ。現在は港区の所有といわれ、今後どうなるのかが注目される。
今回訪ねたのは2014年2月、記録的な大雪から間もない日で、キャンパスにはまだ雪が残り、雪の重みで折れたらしい大木の枝も片づけられず放置されていたが、若葉の季節になれば、きっと美しくよみがえり、気持ちよく散策できるに違いない。もし平日の昼時にこの辺りを通りかかったら、別棟にある生協食堂にでも立ち寄ってリーズナブルなランチ(写真下段右)をいただき、学生時代に思いをはせてみてはどうだろう。
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