工業地帯の残像
中央区晴海と江東区豊洲を隔てる晴海運河。そこには春海橋という橋が架かり、晴海通りが通っているが、平行してレトロな鉄橋が走っているのが目を引く。これは、かつて東京都港湾局が運営し、平成元年(1989)に廃止となった貨物専用鉄道線の遺構である。残念ながら立ち入りは禁止となっているが、鉄橋部分にはしっかり線路が残っていて、ディーゼル機関車が今にも走ってきそうな雰囲気を漂わせている。
豊洲はすっかり高層ビルや大型商業施設が建ち並ぶ街に様変わりしてしまったが、かつては石川島播磨重工業や東京ガスなどの大規模工場が立地する工業地帯であった。そのイメージをわずかに残しているのが、この貨物線の鉄橋と、晴海側に唯一残る「晴海小野田レミコン」の工場(写真下)といえようか。レミコンとはレディーミックスドコンクリートの略で、練り混ぜた状態で出荷されすぐに現場で使うことができる、いわゆる「生コン」のこと。開発が続く都心臨海部は依然として生コン需要が旺盛で、大需要地のすぐそばにあるこの工場の役割は大きいと思われ、それが2011年の今もなお稼動を続けている理由であろう。だが、そのおかげで豊洲側とはひと味違う、どこか懐かしい風景が残り、廃線萌え~な方や近頃はやりの工場萌え~な方も注目の、都心では数少ないスポットの1つとなっているようである。
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