江戸の大橋の面影
東京駅日本橋口を認識したのは、昨年(2007年)、サピアタワーと呼ばれる超高層ビルが出来てからだと思う。以来、地下鉄銀座線、東西線と乗り継ぐ時に、ここから日本橋駅まで歩くことも多くなった。途中、呉服橋交差点を通るが、ここには昔、江戸城外堀があり、呉服橋門という城門があって橋がかかっていた。門を出て橋を渡ると呉服町があり、その先には日本橋の大商業地が広がっていたという場所である。しかし、明治になると外堀の門はことごとく取り壊され、さらに戦後は外堀が埋められて橋も次々に姿を消した。呉服橋も今は何も残っていないが、交差点を北へ折れ、一石橋を渡ると、昔の面影に出会うことができる。
まず左手に見える「常盤橋」は渡らず、右手に日本銀行本店(江戸時代は金貨鋳造所「金座」だった)を見ながら少し先に行くと、かなり老朽化した橋がひっそりと残っている。これが江戸城常磐橋門の存在を今に伝える「常磐橋」である。大手門に近く江戸城の正面玄関的な役割を果たしていた常磐橋門は、渡り櫓をそなえた枡形門(桜田門参照)であり、そこに架かる常磐橋は隅田川に両国橋が架かるまでは江戸随一の大橋だったと言われる。現在の橋は、明治10年(1877)、取り壊した城門の石垣の石を活用して架け替えられたもので、現存する都内最古の洋式石橋だそうである。関東大震災の後、先にみた「常盤橋」が架橋されて引退し、現在は修復された城門の石垣の一部とともに公園と一体となっているが、そのさびれ具合、もう少し何とかならないかと思わずにはいられない。
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