昭和のにおい
いつも西新橋1丁目の交差点で、ライトアップされた東京タワーを仰ぎ見ながら家路につく。
その東京タワー、昭和33年(1958)12月23日に開業し、今年2008年の12月で50周年を迎えるが、このところ訪れる人が増えているらしい。展望台に上る有料来場者は、年間ざっと300万人と言われ、過去最高だった昭和34年の520万人には及ばないが、2001年が225万人だったことからすれば、その伸びはすごい。何倍も広い上野動物園の年間350万人にも匹敵する来場者を、この「電波塔」の展望台が集めていることになる。
人気復活の背景は、「東京タワー」(江國香織)、「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」(リリー・フランキー)、「ALWAYS 三丁目の夕日」など、話題の小説や映画の影響も大きいだろう。さらに、地上デジタル放送の本格化に対応するため高さ610mの新東京タワーが墨田区に建設されるという計画が話題になったことも、改めて東京タワーに注目を集めさせる結果になっている。
私も10何年ぶりかで行ってみたが、やはり混んでいた。土曜・日曜は、展望台にエレベーターを使って上るのに1時間半程度は並んで待たなければならないとのことだ。人気の理由をリニューアルしたことに求める向きもある。確かに、昔と比べれば変わってはいるのだが、フットタウン(タワーの足元にあるビル)を歩いていると、「昭和」のにおいが随所に残っている。昔ながらのいかにも観光土産といった品物を年配の店員さんが販売している店、蝋人形館、トリックアートギャラリー、かつてはどこのデパートにもあった屋上遊園地など、年配者にはなつかしく、子供たちにはちょっと怪しくてワクワクするような世界がある。それがまた、有名ブランドの店が並ぶピカピカの高層ビルなどでは味わえない、東京タワーの魅力の1つに思えるのだ。
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