トンネルと公園の物語
青山霊園の縁を通って西麻布・六本木と青山1丁目を結ぶ通り(環状3号線)は、一部がトンネルになっていて、六本木トンネルという。1993年の開通だそうである。ドラマのロケなどにもよく使われるとのことで、ご存じの方も多いかもしれない。
2012年2月のある日、六本木から歩いてみた(写真上)。陸橋のような部分もあり、実際のトンネルは100メートルちょっとであろうか。その上には山があるわけではなく平坦で、普通ならトンネルにしなくてもよかったはずだが、ここは普通の場所ではなかった。米軍のヘリコプター基地があって立ち退いてもらうわけにもいかず、やむなくトンネルになったらしいのだ。
トンネルを抜けると、すぐ右手が国立新美術館の入口、目の前には乃木坂トンネルの陸橋部分が見える。そして道路を隔てて左手が都立青山公園である(写真中左)。この公園は500メートルも離れた南北2地区からなる珍しいもので、こちらは南地区。見渡せば冬枯れの時期ということもあってか、何とも殺風景である。さらに高台に上ると、金属製のフェンスが張り巡らされ、園内の道が途中で途切れたようになっていて「立入禁止」の標識が立つ(写真中右)。その先が米軍のヘリポートになっているのだ。トンネルの工事期間中はヘリポートが使えないということで、もともとは公園だった場所が代替地として提供された。それがトンネルの完成後も返還されず、そのままになっているのだそうだ。そんなわけだから、公園全体の整備状況も今一つということなのだろう。「立入禁止」の表示を眺めながらベンチでひと休みしても落ち着かず、何だかちょっぴり物悲しくもあり、早々に立ち去ることにした。振り返って見る六本木トンネルの背後には、森タワーの無機質な巨体がそびえていた(写真下)。
CONTENTS