郵便局はショッピングセンター
2013年3月21日、東京駅丸の内南口の目と鼻の先、旧東京中央郵便局跡地に建設されたJPタワーに、日本郵便(株)が初めて手がける大型商業施設「KITTE」がオープンした。
38階建の高層棟と5階建の低層棟からなるJPタワーの竣工は2012年5月のことで、オフィスビル部分が先行稼働していたが、今回のKITTEの開業で晴れてグランドオープンとなった。だが、ここに至るまでには紆余曲折があった。昭和6年(1931)に建てられた旧東京中央郵便局は重要文化財級の建物といわれ、保存を望む声が強かったからだ。鳩山邦夫総務相(当時)が、すでに始まっていた取り壊し工事にストップをかけたのも記憶に新しいと思っていたら、もう4年も前のことだった。ちょうどその頃にたまたま撮影したのが右上の写真だ。騒動の結果、旧建物の保存部分が当初の計画より拡張され、駅舎に面した外観がほぼかつての姿を保つようにして完成したのである。
正面入口から一歩中に入ると、シンプルな外観からは想像もつかない大きな商業空間が開ける。5階まで吹き抜けになった三角形の広いアトリウムを取り囲むように回廊が走り、全国から集めた多彩なテナントが軒を並べている(写真中右)。見通しが効いて、自分のいる位置がわかりやすいのが方向音痴の身には嬉しい。地下の食品フロアも含め、施設全体が程よい大きさにまとまっていて利用しやすいという印象だ。6階部分にある屋上庭園も気持ちが良い。東京駅を発着する新幹線や在来線がパノラマのように見通せる。残念ながら正面から見ることはできないが、復元された赤レンガの駅舎を間近に俯瞰できる(写真下)。さらに、2階・3階の一部には東京大学が所有する学術文化財等を無料で公開する博物館も開館し、長い間封印されてきた古い蔵の中を探検するような、不思議な感覚を楽しませてくれる。
JRに続いてJPも大型商業施設の運営に成功するのか、民業圧迫ではないのか、などという議論はさておき、面白いスポットがまた1つ誕生したことは確かで、東京駅・丸の内周辺はますます魅力的なエリアに進化していきそうである。
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