どこでも腰かけ文化
最近、会社の周りのコンビニエンスストアにも、座って飲食のできる「イートインスペース」を持つ店が増えてきたなあ、と思っていたら、何やら街角のあちこちに椅子やベンチが目につくようになってきた。テラス席のあるカフェやレストランの増加もあるが、再開発で「公開空地」(こうかいくうち)が数多くできていることも1つの要因であろう。
大型ビルができた時、以前より道が広がったり、新しい広場ができたように感じることがある。これは多くの場合、建物の敷地の一部が誰もが自由に通行できるスペース、すなわち公開空地として提供されたためらしい。公開空地を設けることで都市計画で定められた容積率の制限が緩和され、より大きなビルが建てられる特例制度があり、大規模開発で盛んに利用されている。この公開空地に緑化スペースと共に椅子やベンチをデザインする例が増えており、そこでパソコンを広げたり、テイクアウトのコーヒーを飲んだりするオフィスワーカーの姿も日常の風景になってきている。
屋外だけではなく、ビルの中にも異変が起きている。周囲に複数の飲食店が並び、中央に共用のテーブル席を多数設けた「フードコート」があるフロアは郊外のショッピングセンターの専売特許かと思いきや、何と霞が関のランドマーク、霞が関ビルにも同様のスペースが出現し(写真下右)、「びっくりぽん!」である。
高齢化と働き過ぎにより長時間立っていられない人が増えたというわけでもなかろうが、都心のオフィス街には、今や「どこでも腰かけ文化」が育ちつつある。あまり急がず、まあ一息入れて行きましょうということなら、少し良い時代に向かっているのかな、と思う2016年3月某日である。
CONTENTS