万世橋駅、新たな旅立ち
秋葉原の電気街(中央通り)を神田駅方面に進むと万世橋に至る。神田川沿いにアーチが連なる赤レンガの建造物が見え、屋上を中央線快速電車が通過していく。東京駅と同じ辰野金吾の設計で、かつて中央線の大ターミナル駅として栄えた旧国鉄万世橋駅の遺構である。
1943年の廃駅以来ひっそりと眠り続けていたこの場所が、70年の時を経て再び賑わいを取り戻そうとしている。2013年9月14日のオープンに向け、遺構を活用した新しい商業施設「mAAch ecute(マーチエキュート)神田万世橋」の工事が進んでいるのだ。11の飲食・物販店舗が入る計画とか。神田川に面した部分には、親水デッキという自由通路が新たに設けられているのが見える(写真右上)。
正式なオープンを前に、工事中の施設の一部を使って、7月22日から8月18日迄の期間限定ビアガーデン「ビアアーチ」の営業が始まった。新御茶ノ水のソラシティ、淡路町のワテラス、万世橋畔の肉の万世本店、メトロ末広町駅先にあるアーツ千代田3331と連携したイベント「神田麦酒祭り」の会場の1つとなっているもので、赤レンガの建物内に席が設けられ、旧交通博物館跡地にできた「JR神田万世橋ビル」との間の通路には、屋外テラス席が連なっている。
生ビール500円、おつまみ類の品揃えは限られるが、何よりのごちそうは、歴史が刻まれた建物のたたずまいである。アーチをくぐると、まるで洞窟のようでもあり、屋上を走る鉄橋の構造部分がむき出しに演出されていたり、工事中の赤レンガやコンクリートの壁面がそのままになっているのが味わい深い(写真中)。この「未完成」の面白さは、工事中ならではのものであろう。日が沈むと、遠い過去の世界にタイムスリップしたかのような雰囲気に包まれて、心地よく酔いも回る。
駅ナカビジネスに続き、JRの高架下ビジネスも首都圏のあちこちで動きだし、一段と本格的になっていると聞く。秋葉原周辺では、すでに「2k540」や「ちゃばら」が営業しており、また1つ、新たな切り口の見どころが増えそうである。
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