佃煮屋さんの世界の味
東京駅一番街で手土産を物色していると、新橋駅近くに本店がある佃煮の老舗「玉木屋」の店を見つけた。実を言うと、普段食べる佃煮といえば、コンビニおにぎりでも定番の「昆布」か、ビン入りの「ごは○ですよ」くらいのもので、貝や小魚などは滅多に口にしない。総務省の家計調査をみると、魚介の佃煮の1世帯当り年間消費金額は2000年以前には1500円程度あったのに、2009年・2010年は1000円程度に落ち込んでいて、さもありなん、と思う。それでも引きつけられたのは、妙にカラフルなパッケージが目を引いたからである。それが「世界のふりかけ」との出会いであった。
そもそも佃煮の発祥の地は、東京の佃島とされる。徳川家康が江戸に入る際、大阪の佃村から漁師を呼んで湾岸の浅瀬を埋め立てた小島に定住させ、沿岸漁業を発展させた。それが今の中央区佃1丁目あたり、かつて佃島と呼ばれた地である。その漁師たちが売れ残った小魚を強い味付けで煮て保存食にしていたのが評判になり、「佃煮」の名で全国に広まったという。
「玉木屋」は江戸時代の天明2年(1782)創業。最初は平らな形の雁喰(がんくい)豆という黒豆を甘く煮た「座禅豆」が評判の店だったが、佃島の「佃煮」に注目して商品化し、さらに名声を高めたそうである。一見、和菓子店のようにも見える新橋本店(写真上)の店内には、「座禅豆」などの煮豆や伝統的な佃煮と並んで、ふりかけやお茶漬け、グラッセなどの新ジャンルも大きなスペースを占める。やっぱり目立つのが、2011年8月現在10品を品揃えする「世界のふりかけ」だ。2年ほど前からテレビ番組などでも紹介され話題になったが、実は佃煮ふりかけのシリーズとして「イタリアントマト」と「チキンカレー」を発売したのは10年も前のこと。ふりかけといってもしっとりした食感で、「イタリアン-」はミートソースご飯のような、「チキン-」はドライカレーのような味になる(ご飯1杯分の1パック当たり105円)。ご飯だけでなく、パンやサラダに振りかけてもおいしい…などと新しい食べ方を提案する姿勢に、ライフスタイルの変化に積極的に対応しようとする店の意気込みがうかがえる。
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