新橋の2つの小川軒
ある席で手土産の話になり、「えっ、新橋に勤めているのに、小川軒のレイズン・ウイッチって知らない?」と、冷やかな視線を浴びた。そんなに有名じゃないよなあ、とぼやきつつ調べてみた。
新橋駅を汐留口のほうへ出て目の前に、新橋駅前ビルが見える。1966年竣工のこのビル、一歩足を踏み入れると、団塊の世代のサラリーマンの姿がよく似合う飲食店がいくつも軒を連ねている。その奥のほう、第一京浜に面した位置に「巴裡(パリ) 小川軒」があった(写真左)。目黒にある(株)巴裡が出している小川軒という店のようだ。店はこぢんまりして過度の演出もなく、清楚な感じだ。早速10個入り1050円也を手に入れる。商品の包装も至ってシンプルなのが好感が持てる。レイズン・ウイッチというと、北海道「六花亭」のマルセイバターサンドを思い浮かべるが、ネット上で調べると、六花亭はこってり系、小川軒はあっさり系という評価。1つ食べみて、そうかなと思う。タルト生地のような味わいのビスケットもおいしい。
さて、このビルにはもう1つ小川軒がある。店名は「小川軒カフェ」。こちらは洋菓子店ではなくレストランで、新橋駅側に面している(写真右)。1050円のランチが近隣サラリーマンにも人気らしい。聞いてみると、「当店は代官山の小川軒です」とのことだった。
このあたりの事情は「お茶の水小川軒」のホームページが参考になる。それによると、小川軒は明治38年(1905)に汐留で洋風レストランとして創業、明治40年に新橋に移転した。烏森駅(現在の新橋駅)が開業したのは、その2年後のことであった。やがて2代目の時代、昭和39年(1964)、東京オリンピックの年に渋谷区代官山に移る。洋菓子にも力を入れ、レイズン・ウイッチを開発したのも2代目だそうである。その2代目が亡くなった後、長男が代官山小川軒、次男が目黒小川軒、三男がお茶の水小川軒を経営し、今日に至っている。3社ともレイズン・ウイッチを製造販売しているそうだ。「支店」といったような形だが、今なお新橋で商売を続けているのは、やはり創業の地への思いの強さゆえだろうか。
※新橋駅前ビルの「小川軒カフェ」は2010年2月に閉店しました。
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