緑の美術館で料亭の味
地下鉄白金台駅から徒歩7分ほどのところに東京都庭園美術館がある。昭和8年(1933)に建てられた旧皇族の「朝香宮邸」を昭和58年(1983)、庭園を含め美術館として公開したもので、一見シンプルな建物に見えるが、一歩中に入ると「アール・デコの館」と称される素晴らしい装飾や調度品に目を奪われる。まさに「建築そのものがアート」という美術館である(写真左上)。
だが今回は、その入口にある「Cafe 茶洒(サーシャ) kanetanaka」という店にも注目したい(写真下)。美術館外の施設なので入館料を払わなくても利用でき、ほぼ年中無休で営業している。実はここ、新橋演舞場近くにある料亭「金田中」が運営している店。私などは名前を聞いてもピンとこないが、ハイソな方々の間では有名な老舗だそうだ。その味が気軽に楽しめるとあって、美術館よりこちらを目的に訪れる方も多い。食事メニューの特徴は、小さめの丼を使った数種類のご飯物と麺をセットでオーダーするというもの。ランチタイムはこれに玉地蒸し(具のない茶碗蒸し)またはミニサラダ、食後にコーヒーまたは抹茶がつく。通常の組み合わせよりお得な価格のおすすめセットもあり、この日は1050円と1365円の2種類。ちょっと見栄を張って「松茸ご飯とひすい麺のセット」1365円をいただく(写真右上)。ひすい麺は初体験だが翡翠色をした和風味のラーメンという感じ。このランチ、たしかに満足感は高い。
さて「朝香宮邸」は通常、建物内の撮影は禁止だが、たまに撮影が許可される「特別公開」が行われる。今年2011年は10月6日から31日まで。高尚な「芸術の秋」と「味覚の秋」をダブルで楽しむチャンスではなかろうか。
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