ノコッタ、ノコッタ
写真は「虎ノ門 砂場」。名の知られた蕎麦屋の老舗の1つ。会社から数分で歩ける。創業は明治5年(1872)。江戸末期に出版された江戸のミシュランガイドともいえる「江戸名物酒飯手引草」に6店の「砂場」が紹介されており、その中の1つ「糀町(麹町)七丁目砂場」からのれん分けで誕生した店という。袖看板に「大坂屋 砂場」とあるのは、大阪が発祥であることを今に伝えている。大阪城築城の際、砂置き場だった場所で営業していた店を、当時の人が砂場と呼んだのがその始まりという話だ。
さて、この建物は大正12年(1923)の築。といえば関東大震災の年だが、震災を免れ、戦災も免れて存続してきた。近年は老朽化が進み、耐震性能にも問題があるということか、しばらく休業して耐震補強工事が行われていたが、2007年12月24日に再オープンした。申し訳ないが、私の興味は蕎麦の味より建物のほうだ。以前の姿をしっかりとどめてくれたのがうれしい。
しかし、この間に周辺の風景は大きく変わった。写真のとおりすっかり更地になり、片隅に「砂場」だけがぽつんと残された悲しい風景になっている。これからどのような景観に変貌をとげていくのか、大いに気になるところだ。
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