人気のアンパンを
たずねて
アンパンといえば、銀座4丁目にある銀座木村家(写真上)が発祥の地だ。親会社は株式会社木村屋総本店(現在の本社は新宿)。首都圏中心に販売網をもつ大手パンメーカーの1つだが、そもそもは、武士の出である木村安兵衛が明治2年(1869)、現在の新橋駅の近くに開業したことに始まる。銀座4丁目に店を移したのは明治7年、この年に米と麹を使って発酵させた生地で小豆餡を包んだ「酒種あんぱん」を開発した。翌明治8年に明治天皇が向島の水戸藩屋敷へ花見に訪れた時、桜の花の塩漬けをトッピングした酒種あんぱんを献上し、たいそう気に入られたという話は有名である。
銀座木村家では、その伝統を今に伝える「桜あんぱん」をはじめ、常時6、7種類のアンパンが販売されている。かなり小ぶりで、パンというより饅頭の感覚だ。個人的には、桜の塩漬けの高貴な味は口に合わず、香ばしい「けしあんぱん」のほうが好きである。
その「けしあんぱん」が人気の店が、築地場外市場の中にある。「築地木村家」という(写真下左)。いかにも市場の店という感じで、狭い店頭でプラスチックの通い箱に商品を並べて売っている。店長らしき人物のTシャツ・ジャージ姿もユニークである。店内に窯はあるが現在は焼いておらず販売に徹していて、商品はすべて自転車で5分ほどの本店から運ぶ。本店は古い商店建築が残る築地2丁目にあり(写真下右)、銀座木村家からのれん分けで明治43年(1910)に開業した歴史ある店だ。見かけはまさに下町の小さなパン屋さん。よく今日まで営業を続けてこられたと感心する。お客にアピールする商品を作り続けてきた証であろう。
本家の酒種でなくビールホップを使っているのがオリジナルだそうで、ややデニッシュに近いようなサクッとした食感がある。本家より一回り大きく、餡もボリュームがあるが、そのため値段はやや高めのようだ。常時8、9種類を品揃えしており、変り種もある。何を買おうか迷ったら「あんぱんオールスターズ」はどうだろう。8個(8種類)で税込み1380円。箱に7個しか入らず、1個は別の袋に入れてくれるのがなんとも可笑しい。私は楕円形に成型した生地にレモン風味の白餡がぎっしり詰まった「レモンあんぱん」が妙に気に入った。これからも頑張って、ユニークな商品を提供し続けてもらいたいものである。
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