立ち読みもできない
書店は減り続けている。過去10年は毎年600店くらいずつ、昨年は開店が407、閉店が1115で、差し引き708店舗減と、さらに加速した。新規の店の平均床面積は243坪、閉店した店は65坪ということで、床面積の大きな店が開店し、小さな店がなくなる傾向である(以上の数字の出典:『新文化』)。
ところがこのたび、新橋でいちばん大きな店が閉店してしまった。日本最大の直営書店チェーン「文教堂」だ。同チェーンは今年、全国214店舗のうち32店を閉店する計画で、対象のひとつが「新橋店」とのこと。告知間もない2009年3月15日に閉店した。採算の問題だという。
新橋駅から外堀通りに出て信号を渡ったビルの1・2Fで2000年から営業していた文教堂新橋店は、新橋駅の周辺では唯一の大きな書店であった。書店は床面積によって品揃えの内容や質が変わるため、広い店は貴重だった。しかも道に面しているため、ふらっと入ることが可能だった。書店にふらっと入るというのは、人間の知性にとって重要なことだ。
閉店のお知らせには、カレッタ汐留店においでくださいとあるが、その店舗は駅の反対側で、けっこう遠い。狭くはないが、新橋店ほど広くはなく、電通本社の地下2階ということで品揃えにもクセがある。何よりも、通りがかりにふらっと入る場所ではない。今後、新橋周辺の知性の劣化が心配である。
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