クーポンの誘惑
最近、机の引き出しや財布の中を見ると、〇円引きとか無料でプラス1品とかいう類の飲食店のクーポン券が増えてきた。こうして改めて眺めてみると、あまりリッチな外食生活をしていないことがバレバレになってしまいそうだ。積極的に収集しているわけではないが、一度もらうと使用期限まで捨てられないのが、いまだアベノミクスの恩恵薄い給与生活者の悲しい性であろうか。
このクーポン券、以前から日常的に発行しているチェーンもあり、チラシのほかインターネットや携帯電話を使ったものも普及してきているが、近頃は店頭での配布もますます盛んになってきているように見える。これも、2014年4月の消費税増税から3ヵ月を経てなお固い消費者の財布の紐と、それに伴う顧客獲得競争の激化を反映したものといえそうだ。
確かに、クーポン券があるから行ってみよう、と思うことはよくある。利用した帰りに次回ご利用〇円引きの券をもらうと、商品やサービスに不満を感じない限り、また来ようという気持ちになりやすいのも事実。さらに、〇円引きならワンランク値段の高いものを注文してみようなどと、いつの間に店側の思うつぼにはまってしまっていたりする。消費者をこうした状況にしてしまうことを「ロックイン」というそうだ。日本語でわかりやすく説明するなら「顧客の囲い込み」だ。単に〇円引きで安いという理由だけで通い続けるのはちょっと寂しいが、その店を気に入って囲い込まれるなら、それも良しであろう。
ところで、「ロックイン」に似た言葉に「ロックオン」がある。こちらは射撃などの照準装置でターゲットを捕捉し、引き金を引く態勢になったことをいうらしい。営業活動でたとえるなら、「あの人は財布の紐が緩そうだから、徹底的にセールスをかけよう」などと狙いをつけられたケースだろうか。そんなふうに「ロックオン」されるのは、ぜひとも避けたいものである。
CONTENTS