丸の内の英国式庭園
1894年に丸の内最初のオフィスビルとして、英国人ジョサイア・コンドルによって設計され建築された建物を再現した「三菱一号館」が、2009年9月3日にオープンした。正式に美術館として開館するのは2010年4月6日となるが、プレオープンの展示、デジタルミュージアム、カフェ、売店などを見ることができる。古めかしい煉瓦の外観のビルに「新築の匂い」がぷんぷん漂っているのも愛嬌である。
9月3日には併せて商業施設「ブリックスクエア」もオープンした。飲食や衣料関係の店が入った、なかなか興味深い施設だが、それよりも、一号館とブリックスクエアの間の「一号館広場」と名付けられた空間に注目したい。狭いながら、はっきりと「英国式庭園」の特徴を持っている。
フランスのヴェルサイユ宮殿のような、幾何学模様に自然を押し込める庭園とは対照的に、英国の庭園は「自然に直線はない」という言葉に象徴されるように、川や丘など自然の形に添い、植物の伸びる姿を尊重する。この庭園は、平面図にも見られるように、曲線で作られ、人工的な川まで流れている。植物の姿は変化に富み、ところどころに彫刻作品が配置され、散策を楽しませてくれる。石なども上手く使っている。こうした庭園の側から赤煉瓦の一号館を見ると、実にしっくりとくる。正面から見る姿と大違いだ。建物は、周囲の環境あってのものだと改めて感じる。
日本語にすれば「煉瓦広場」となるこの「ブリックスクエア」には、他に、照明がガス燈であったり、英国のパブ特有の看板がぶらさがっていたりと、全体で英国の雰囲気を出しているのが楽しい。昼は庭園の緑が心を癒し、夜は東京ガス協力による本物のガス燈のゆらめく炎が柔らかい夜景を醸し出すこの広場は、丸の内の名所となるに違いない。
だたひとつだけ残念だったのは、一号館内の売店が「ストア」と名付けられていることだ。ここはやはり、アメリカ英語の「ストア」でなく、イギリス英語の「ショップ」でお願いしたい。
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