銀座の野菜
2008年7月某日、炎天下の銀座のデパート・松屋の屋上にのぼった。野菜がどんなふうに育っているのか見たかったからだ。トマト、ナス、キュウリ、ゴーヤ、小型のスイカ、カボチャなどが、しっかり実をつけていた。すでに花の盛りは過ぎていたが、ラベンダーも植えられており、すがすがしい香りが漂っていた。
水やりをしていた屋上のペットショップの担当の方に聞いた。水は売り物である金魚などの水槽の水を使う。その中には、餌や金魚のフンに含まれるリンなどが溶け込んでいるため肥料になる。毎日古くなった水槽の水は必要な処理をして捨てていたが、菜園があるために、それが活用できて野菜が育つのだ。エコな話ではないか。
もともとこの場所、数年前に屋上遊園地が廃止された後はベンチだけが置かれた殺風景な休憩スペースだった。それが菜園に姿を変えたのは、2007年4月、テレビ朝日の番組「素敵な宇宙船地球号」が「銀座グリーンプロジェクト」を立ち上げたことがきっかけだ。番組では、2006年からNPO法人によって進められている「銀座ミツバチプロジェクト」に注目した。都心の環境・生態系について考えながら、蜂蜜を収穫して楽しもうというもので、銀座のビルの屋上で「銀ぱちくん」と名付けられたミツバチが飼育され、とれた蜂蜜は、銀座の洋菓子店などで商品化もされて人気を呼んでいるという。
番組ではこのプロジェクト支援のため、銀座周辺のビルの屋上に野菜や果物を植え、ミツバチに受粉させようとした。それが「銀座グリーンプロジェクト」で、屋上を緑化することでヒートアイランド現象の防止にもつながる非常にエコなアイデアだった。それに真っ先に賛同したのが銀座松屋だったのだ。
2007年5月に、保水性がよく10センチの土厚で野菜が栽培可能な特殊な土を使って屋上約100平米が緑化され、その一部が菜園になった。今年2008年は緑化面積は150平米になり、「銀ぱちくん」の活躍で野菜もさらにたくさん実った。今日初めて見たオクラの花(写真下)の思いがけない美しさに、さわやかな感動があった。
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