皇居外苑“楠エリア”
立派な騎馬武者像をツアー客が物珍しそうに見上げている。「何これ?」と、思う人も多いだろう。場所は皇居外苑、馬場先門から濠を超えてすぐ左手のエリア、像は鎌倉時代末期の武将「楠正成像」である。
「聞いたことあるけど、イマイチよく知らない」というのが正直な感想。近頃増殖中の「歴女」(歴史マニアの女性)でも、楠正成ファンというのは少ないのでなかろうか。楠正成(くすのきまさしげ)は、鎌倉幕府を打倒し朝廷政治を復活させようと立ち上がった武将の一人。その後、討幕軍が分裂し、後に室町幕府を興す足利尊氏らと戦って討死している。その評価は時代によっても変わってきたが、朝廷に忠誠を尽くした武将として「楠公」(なんこう)という敬称で呼ばれることも多い。どちらかというと関東よりは、当時の戦闘の主舞台であり、楠正成を祀る湊川神社(神戸市)などのある関西での知名度が高いようだ。
さて、この銅像は住友財閥が宮内省に献納したもので、所有する愛媛県別子銅山の銅を使い、東京美術学校(現東京芸術大学)の複数の教授と学生が6年をかけて明治29年(1896)に完成、さらに4年をかけて明治33年(1900)に現在の位置に設置が完了したとのこと。高さ4メートルもある巨大な銅像で、由来はともかく、純粋に作品としてみて力強く躍動感のある見事な仕上がりと感じる。「機動戦士ガンダム」の等身大像は建設しても、このような銅像を作るような時代は、もう訪れないような気がする。
「楠正成像」の周辺は、良く整備された、絵に描いたように日本的なクロマツ林になっていて散策も心地よい。お腹がすいたら、近くにある「楠公レストハウス」で食事もできる。ドリンクを含め30品ほどが揃った和食の「おばんざいバイキング」が売り物(1200円)のようだが、そばうどん、カレー、丼物の類もある。またレストハウス内や、銅像近くの売店「くすのき」では極めてオリジナル性の高い土産品も好評販売中。楠公グッズ、江戸城を創建した太田道灌の末裔が作っているという日本酒、菊の御紋入りの瓦せんべい等々…畏れ多くてとても手が伸びないのであった。
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