世界遺産登録を祝して
2013年6月22日、富士山の世界遺産への登録がユネスコの世界遺産委員会で決定した。タイミングが良いことに、それから10日もたたない7月1日は山開き。ご来光を見るために、大勢の登山客が押し寄せた。
ご承知のように、今回の登録決定は自然遺産ではなく「文化遺産」である。その存在が、人々の信仰や文化に大きな影響を与えてきたことが評価されたものだ。とりわけ信仰の対象としての富士山は、関東各地の神社に残る「富士塚」がよく物語っている。かつては修験者の修行の場であった富士山も、江戸時代には庶民がお金を出し合って「富士講」を組織し、代表者を富士山に送るようになった。彼らが持ち帰った富士山の溶岩などを随所に使って築いたのが「富士塚」であり、富士山に登ったと同じご利益が得られるパワースポットして信仰を集めたという。
そこで、登りがいのある富士塚があるという品川神社を訪ねた。京浜急行で品川から2つ目、新馬場駅から第一京浜(国道15号)を渡ってすぐの所にあり、平安時代末期、源頼朝が祠を建てたのが始まりとされる神社である。
急な石段を上っていくと、左手に小さな鳥居があり(写真上)、ここが登山道入口。1合目、2合目と合目石が続き、6合目を過ぎると突然、急勾配の険しい岩山となる(写真中左)。頂上に立って見下ろすと、国道ははるか下(写真中右)。約15メートルというが、数字以上の高低差を感じ、足がすくむ。下りはちょっと恐いので、やや安全そうな北側の登山道を通って5合目まで下りると、富士山の神様を祀る浅間神社が佇んでいる(写真下左)。
今でも都内には、こうした富士塚が50ほどあるとか。かつてメトロ八丁堀駅に近い鉄砲洲稲荷神社を訪れた時に見た富士塚は、やや小ぶりだが溶岩の荒々しい山肌が印象的だった(写真下右)。とても富士登山なんて、という御仁も、せっかくの世界文化遺産登録である。お近くの富士塚をお参りして、祝意を奉げてみるのもよろしいのではなかろうか。
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