「都鳥」を身近に感じて
ある小春日和の午後、聖路加ガーデンから隅田川岸の遊歩道を歩いていたら、たくさんのユリカモメに出会った。新橋と臨海副都心をつなぐ新交通システムの愛称にもなっている東京都の鳥であるが、「みやこどり」の別名もあり、平安時代の歌人・在原業平がはるばる武蔵の国を訪れた際に都の恋人への思いを詠んだ歌「名にし負わば いざこと問はむ都鳥 わが思ふ人はありやなしやと」に登場する鳥としても知られる。個人的には「白い鳥」というイメージしかないが、夏は頭の部分が黒く、冬になると白く変わるのだとか。その名残が頬のところに黒く残っていて、外見上の1つの特徴になっている。
それにしても、このあたりのユリカモメは人への警戒心が薄いようで、2メートルくらいまでは楽に寄って写真に収めることができる。そして、さらに思いがけない光景が勝鬨橋のたもとで待っていた。キラキラ輝く日差しの下、水をいっぱいにたたえたコンクリートの“浴槽”で何羽ものユリカモメが気持ち良さそうに水浴びをしていたのである。スズメが羽をきれいにするために水たまりでパシャパシャやっている姿はよく見かけるが、ユリカモメは初めてだ。都会の生活にたくましく適応し、それなりにエンジョイしているような様子が妙に可笑しくて、ちょっとハッピーな気分になった。
ところで、こんな東京の愛すべき鳥をテーマにした東京土産が、今年2010年春、なぜか岩手県の銘菓「かもめの玉子」の会社から発売されている。その名も「ゆりかもめの玉子」。練乳を中心に、黄身餡、カステラ生地で包み、チョコレートでコーティングして卵型に仕上げてある。価格は1個150円見当とやや高めだが、なかなかハッピーなおいしさ。取扱店が数寄屋橋近くの「銀座めざマルシェ」や東京駅の「東京みやげセンター」など数カ所しかないことを一言添えれば、土産としての価値も一段とアップしそうである。
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