「親鸞」が日本を救う?
東日本大震災が発生してからというもの、書店の雑誌コーナーをのぞくと、震災の特集雑誌に混ざって不思議と目につくのが「親鸞」をテーマにしたムック本である。
親鸞は、浄土宗の宗祖である法然を師とし、その考え方をさらに発展させた鎌倉時代の僧で、日本で一番多くの信者を抱えるといわれる浄土真宗の宗祖である。表現が必ずしも正確ではないかもしれないが、厳しい修練を積まなくても「南無阿弥陀仏」と唱え続けることで誰もが極楽浄土に行けるという考え方が人々に広く受け入れられ、一部の限られた者の信仰だった仏教を大衆のものとしたのが大きな功績とされる。法事の折に「南無阿弥陀仏」と唱えていたら、その家は浄土宗か浄土真宗ということになろう。
その「親鸞」の本が目立つ理由の1つは、来年2012年1月16日が親鸞の750回目の命日にあたり、浄土真宗本願寺派の本山である京都の西本願寺などでは50年ぶりの大規模な法要行事が2011年春から繰り返し開催され、多くの信者(や観光客)を引きつけていること。そしてもう1つは、未曾有の大災害に遭遇し、無意識のうちに人生について考え、何らかの拠り所を求める人が増えていることの反映ではないかと思うのである。
そこでふと思い出したのは、以前に訪れたことのある近隣の寺に立つ、旅姿をした大きな親鸞の銅像である。1つは浄土真宗本願寺派本願寺築地別院、通称築地本願寺(写真上左)、そしてもう1つは麻布にある善福寺(上右)。善福寺はもともとは空海が開いた真言宗の寺だが、関東から京に戻る旅の途中に親鸞が訪れたのがきっかけで浄土真宗に改宗し今日に至る。どちらの親鸞像も立派なものであり、托鉢笠をかぶって顔がよく見えないのがかえって謎めいている。改めてご尊顔を拝みにいこうかなあ、などと考えている今日このごろである。
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