東京初の町立公園
新橋5丁目、駅から少し離れた、小さなビルが建ち並ぶ町の中にある「塩釜公園」は、1930年に開園した。面積は約840平方メートル。江戸時代に仙台藩の屋敷があった土地だ。関東大震災後、町民が憩える場所が欲しいという地元の声に応え、伊達家が愛宕下町会に寄付したことにより、東京初、というか唯一の「町立公園」として開園したとのこと。1972年に港区の区立公園となった。
公園の奥、緑深いゾーンは神社で、これは宮城県塩竃(しおがま)市にある鹽竈(しおがま)神社の、いわば伊達家用出張所だ。鹽竈神社は古来より、東北鎮護の神社として、また陸奥国の一之宮(地域で最も社格の高い神社)として、奥州藤原氏をはじめ同地方の支配者の崇拝を集めてきた。とくに伊達家は崇敬厚かったとのことで、この神社は、参勤交代制度により江戸に住むことになった伊達一族を、精神的に支えてきたのだろう。
これらの縁起は、さりげない場所にある石碑にきちんと記されている。気がつきさえすれば、東京のあちこちに、過去の人々と現在の私たちをつなぐタイム・トンネルが存在しているのだ。
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