江戸城で梅を観る
花見といえば「桜」というのが合言葉のようになっているが、春の訪れを一番先に印象づけてくれるのは「梅」の開花ではないだろうか。日本最古の和歌集「万葉集」でも、桜より梅の花を詠んだ歌のほうがはるかに多いそうで、奈良時代くらいまでは梅のほうが人気があり、花見といえば「観梅」のことをさしていたようである。
さて、今年2011年は年初からバタバタとして、ゆっくり梅など観にゆく余裕もなく3月になってしまった。パッと咲いてパッと散る桜と違って梅の場合は開花期間が長いからまだ見られるに違いないと思い、3月最初の週末に皇居東御苑の梅林坂を訪れてみた。最盛期は過ぎたようだが、50本ほどある梅の木は見事に咲き誇り、花の蜜を目当てに何羽ものメジロが忙しく飛び回っていて(写真上)その様子が妙に面白く、よい「心の休日」になった。この皇居東御苑の梅は、まだつぼみの状態の木もあり、ひょっとすると桜前線が東京に近づくくらいまで楽しめそうな感じだった。
さて、この皇居東御苑は江戸城の本丸、二の丸、三の丸があったところで、明治以降は皇居の一部となっているが、昭和36年(1961)から庭園として整備され、昭和43年から無料で一般に公開されている。江戸時代の遺構が数多く残る中で、まさに日本の四季が凝縮されたような美しい風景を一年中楽しむことができる貴重な存在と思う。入園はメトロ大手町駅に近い大手門、竹橋駅に近い平川門と北桔橋門の3カ所から。江戸城の立派な門をくぐって入るというのもなかなか良いではないか。個人的には北桔橋門(写真下)が気に入っている。「きたはねばしもん」と読む。ひときわ高く築かれた美しい石垣、そして門をくぐると、天守閣の台座が目の前に迫る。江戸城の防衛上非常に重要な門で、かつては桝形が築かれ、橋は「跳ね橋」になっていて、通常は跳ね上がった状態で通行を遮断していたそうである。こんな門を繰り返し行き来していると、いつの間にかモエ〜モン(萌え~門)になりそうである。
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