キツネとタヌキの
いる神社
JR秋葉原駅中央口を南側に出て、道路を渡る。入口が狭く気づかない人も多いが、東北新幹線の高架橋に、へばりつくように歩行者用の橋が架かっている(写真左上)。「神田ふれあい橋」という。もともとは新幹線の工事用の橋だが、地元の要望で残され、平成元年(1989)から歩道橋として使われているそうだ。
その橋を往くと「江戸名所 柳森神社」の社が見える。室町時代、江戸城を築城したことで知られる太田道灌が佐久間町一帯に数多くの柳の木を植え、京都伏見稲荷の分霊を祀って建てた神社で、江戸時代の神田川の工事に伴い、この地に遷座したと伝えられる。神社といえば、多少なりとも高い所にあるイメージだが、この社は道路より低い土地に建ち、階段を下りてお参りするのが変わっている。
さらにユニークなのは、キツネがつきものの稲荷神社に、タヌキがいることだ。五代将軍綱吉の生母、桂昌院が江戸城内に創建したという福寿いなり社が明治になって合祀されたことがその理由。町人の娘であった桂昌院が他を抜いて(たぬき)出世した幸運にあやかろうと「おたぬき様」として崇拝され、今日もなお出世や金運の神様として信奉されているらしい。
境内には、このほかに複数の社が合祀されているほか、富士塚らしきものがあれば、その昔、若者たちが力試しに使ったという力石群なども見られ(写真右下)、狭いスペースに人々のいろいろな思いがぎっしり詰まっている。秋葉原の喧噪の中でひと時を過ごした後に立ち寄ると、その怪しげな雰囲気がいっそう印象深く感じられるかもしれない。
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