駅ナカの
江戸城外堀跡
虎ノ門駅11番出口は霞ヶ関コモンゲートに直接つながる出口であり、コモンゲートや霞ヶ関ビルに向かう人はみなエスカレーターに乗るのだが、実は左側奥に地味な階段があって、これを上ると「江戸城外堀跡・地下展示室」のスペースとなっている。ガラスの向こうに江戸城の外堀跡が見え(夜はライトアップされる)、堀を構成する石が展示され、壁には説明のパネルがある。
階段の途中には、外堀の水底と水面の高さも示されていて、たいへんに浅かったことが実感できる。
この外堀跡は、旧文部省の敷地内にあり、とくに保存するつもりもなかったが手を付けることもないまま残っていたのだという。「先送り」にされていたのだ。そして文部省を解体し霞ヶ関コモンゲートを建築する工事(2005年~2007年)にあたり、改めて発掘調査が行なわれ、史跡として立派に展示された。昭和の半ばまで日本人は、未来へ前向きに進むことに夢中で、過去の遺産を大事にする意識が弱く、江戸時代の名残などどうでもよかったのだろう。それが昭和後期・平成の現在になって、ようやく先祖の人々が生きていた証を大事にする余裕が出てきたのだ。
1933年竣工の旧文部省庁舎も、コモンゲートが竣工した2007年に有形文化財として登録された。
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